「メガネやコンタクトレンズから卒業したい」
そんなときに選択肢となるのが、ICL(眼内コンタクトレンズ)やレーシックなどの近視矯正手術です。
どちらも近視や乱視を矯正して、メガネやコンタクトレンズに頼らない生活を目指す治療ですが、実はその方法は大きく異なります。
「ICLとレーシックは何が違うの?」
「日本ではなぜICLが人気なの?」
「海外ではレーシックが多いって本当?」
「結局、自分にはどちらが向いている?」
今回は、ICLとレーシックの違いについて、眼科医の立場からわかりやすく解説します。
ICLとは?

ICLは虹彩の後ろ・水晶体の前に挿入し、角膜を削らずに近視や乱視を矯正します
ICLとは、Implantable Collamer Lensの略で、目の中に専用のレンズを挿入して近視や乱視を矯正する治療です。
日本では一般的に「眼内コンタクトレンズ」と呼ばれています。
通常のコンタクトレンズとは違い、角膜の上にレンズを乗せるのではありません。
目の中にレンズを挿入し、自分の水晶体を残したまま視力を矯正することがICLの大きな特徴です。
そして、ICLのもう一つの大きな特徴が、
「角膜を削らない」
ということです。
レーシックとは?

ICL(眼内にレンズを挿入)とレーシック(角膜をレーザーで調整)の違い
レーシックはLaser in Situ Keratomileusisの略語です。角膜の表面にフラップ(ふた)を作り、
角膜にレーザーを照射して角膜の形を変えることで、近視や乱視を矯正する手術です。
目の表面にある角膜をレーザーで削り、光が網膜に正しくピントを結ぶように調整します。
つまり、
ICL:目の中にレンズを入れる
レーシック:角膜をレーザーで削って形を変える
というのが、最も大きな違いです。
レーシックは1990年代から世界中で広く行われてきた、歴史の長い近視矯正手術です。
現在でも海外では非常に多く行われており、「レーシックはもう古い治療」というわけではありません。
世界全体では、レーシックなどを含む屈折矯正手術が年間約490万件行われる規模と推計されており、レーザーによる視力矯正手術が今も大きな割合を占めています。
なぜ日本ではレーシックが少なくなったの?
ここは、ICLとレーシックを比較するうえで、日本特有の事情として知っておきたいポイントです。
日本では、かつてレーシックが非常に盛んに行われていました。
しかし、現在ではレーシックの件数は大きく減少し、ICLが日本の屈折矯正手術で大きな割合を占めるようになっています。
その背景の一つとして、2008~2009年に東京都内の眼科で発生した、レーシック術後の角膜感染症の多発事件があります。
日本眼科学会によると、この事件では多数の患者さんに角膜感染症が発生し、重篤な視力障害が残った方もいました。
原因は、手術器具の滅菌・消毒の不具合とされています。
当時は、手術に使用する器具の衛生管理が大きな問題となり、レーシックそのものに対する社会的な不安も広がりました。
「レーシック=感染症が怖い」
というイメージが日本で広まった大きなきっかけの一つです。
なお、これはレーシックという手術そのものが感染症を起こしやすいという意味ではありません。
日本眼科学会も、適切な知識を持つ医師が、清潔な環境で適切に滅菌・消毒された器具を使用して行えば、感染症などの合併症は非常にまれであると説明しています。
現在の適切な医療機関では、感染対策を徹底してレーシックが行われています。
「ブレードの使い回し」が原因だった?
当時のレーシック感染症事件について、
「レーシックで使うブレードを使い回して感染症が起こった」
という説明を目にすることがあります。
ただし、医学的には少し注意が必要です。
日本眼科学会が公式に示している原因は、**「手術器具の滅菌消毒の不具合」**です。
したがって、患者さん向けには、
「過去に、手術器具の滅菌・消毒が適切に行われなかったことによるレーシック術後感染症の多発事件があり、それが日本でレーシックに対する不安が広がるきっかけの一つになった」
と説明するのが正確です。
海外ではレーシックは今も多い?

日本ではICLの割合が高く、海外ではレーシックが主要な選択肢の一つです
これは日本と海外を比較すると非常に興味深いところです。
日本ではICLの普及が急速に進んでいますが、海外では現在でもレーシックが主要な屈折矯正手術の一つです。
特にアメリカなどではレーシックの症例数が多く、ICLはレーシックに比べるとまだ一部という位置づけです。
例えば、2024年に報告された米国の術者データでは、米国の屈折矯正手術市場は年間約70万件と推定され、
そのうちICLは約3%に相当する約2.1万件という推計が示されています。
一方、日本では2023年にICLが屈折矯正手術の約70%を占めたという専門家報告があります。
つまり、
日本:ICLの割合が非常に高い
海外:レーシックが依然として主要な選択肢
という、かなり大きな違いがあります。
日本ではICLとレーシック、どちらが多い?
日本全国のICLとレーシックの「年間総手術件数」を同じ条件で集計した公的統計はありません。
そのため、正確な絶対件数を単純比較することはできません。
ただし、専門家による市場データでは、2023年の日本ではICLが屈折矯正手術全体の約70%を占め、レーシックを上回っていたとされています。
また、レーシック専門施設の実績を見ると、例えば品川近視クリニックでは2024年のレーシック手術件数が4,650件と報告されています。
一方、ICLについては、施設によって症例数が大きく異なります。
つまり、日本では、
「レーシックがなくなった」のではなく、ICLの普及によって屈折矯正手術の中心がICLへ大きく移ってきた
と考えるのが適切です。
ICLとレーシックの違いを比較
|
ICL |
レーシック |
|
|
矯正方法 |
眼内にレンズを挿入 |
角膜をレーザーで削る |
|
角膜 |
削らない |
削る |
|
水晶体 |
残す |
残す |
|
眼内レンズ |
使用する |
使用しない |
|
レンズの摘出 |
原則可能 |
― |
|
強度近視 |
適応になる場合がある |
角膜の状態などで制限 |
|
ドライアイ |
比較的少ないとされる |
起こることがある |
|
主なリスク |
眼圧上昇、白内障、感染症など |
ドライアイ、角膜拡張症、感染症など |
|
日本での普及 |
近年急速に増加 |
以前より減少 |
|
海外での普及 |
増加傾向 |
現在も主要な治療 |
どちらにもメリット・デメリットがあり、「ICLのほうが絶対に優れている」というわけではありません。
大切なのは、自分の目にどちらが適しているかを判断することです。
ICLのメリット

角膜を削らない・強度近視にも対応しやすい・必要時に摘出や交換を検討できる点が特徴です
角膜を削らない
ICLの最大の特徴の一つです。
レーシックでは角膜をレーザーで削りますが、ICLでは角膜をそのまま残します。
「角膜を削ることに抵抗がある」という方にとって、ICLは魅力的な選択肢になります。
② 強度近視にも対応しやすい
ICLは、強度近視の方にも適応できる場合があります。
レーシックでは近視が強くなるほど角膜を多く削る必要があります。
ICLでは角膜を削らないため、強度近視の方でも選択肢となることがあります。
ただし、近視度数だけで判断するわけではありません。
前房深度、角膜内皮細胞、眼圧、網膜の状態などを詳しく確認する必要があります。
③ 将来的にレンズを取り出すことができる
ICLは、必要になった場合にレンズを摘出することが可能です。
これは、角膜を削って形を変えるレーシックとは大きく異なる特徴です。
ICLにもデメリットがあります
ICLは非常に魅力的な治療ですが、メリットだけではありません。
ICLでは目の中にレンズを挿入するため、
- ・眼圧上昇
- ・感染症
- ・白内障
- ・角膜内皮細胞への影響
- ・レンズの位置ずれ
などの合併症が起こる可能性があります。
特に重要なのが、ICLでは自分の水晶体を残すということです。
そのため、ICLを受けた後も加齢による白内障が起こる可能性があります。
将来、白内障が進行した場合には、白内障手術を行い、水晶体を眼内レンズに置き換えることになります。
結局、ICLとレーシックはどちらがいい?

目の状態を詳しく検査し、治療の特徴と生活スタイルを踏まえて適応を判断します
これは一人ひとり異なります。
例えば、
ICLが向いている可能性がある方
- ・強度近視がある
- ・角膜を削りたくない
- ・角膜の厚さなどからレーシックが適さない
- ・ドライアイが気になる
- ・将来的な選択肢を残しておきたい
- ・ICLのメリット・デメリットを理解したうえで眼内レンズを希望する
一方、
レーシックが向いている可能性がある方
- ・角膜の状態がレーシックに適している
- ・眼内手術を避けたい
- ・レーザーによる矯正を希望する
- ・ICLより費用を抑えたい
などが考えられます。
ただし、これはあくまで一般的な傾向です。
最終的には、詳細な検査を行ったうえで適応を判断することが重要です。
「ICLとレーシック、どちらが自分に合っている?」から始めて大丈夫です
ICLとレーシックは、どちらもメガネやコンタクトレンズから解放されることを目指す治療です。
しかし、
ICLは「目の中にレンズを入れる」
レーシックは「角膜の形をレーザーで変える」
という根本的な違いがあります。
そして、日本では近年ICLが急速に普及している一方、海外ではレーシックが現在も主要な屈折矯正手術として広く行われています。
つまり、
「世界ではレーシックが古くなったからICLになった」
という単純な話ではありません。
それぞれに適した患者さんがおり、国や地域によって治療の選ばれ方も異なります。
大切なのは、流行している治療を選ぶことではなく、自分の目の状態とライフスタイルに合った治療を選ぶことです。
横浜・センター北でICLを検討されている方へ
センター北しみずアイクリニックでは、ICLの適応検査から手術、術後の診察まで、一人ひとりの目の状態を確認しながら診療を行っています。
「ICLに興味はあるけれど、本当に自分に合っているのかわからない」
「レーシックとICLで迷っている」
「強度近視でもICLを受けられる?」
「コンタクトレンズをやめたいけれど、手術が少し怖い」
そんな方も、まずはお気軽にご相談ください。
ICLは、単に「視力を良くするための手術」ではありません。
これからどんな見え方で、どんな生活をしたいのか。
そこまで考えて治療方法を選ぶことが大切です。
メガネやコンタクトレンズに縛られない、新しい見え方へ。
センター北しみずアイクリニックが、一人ひとりの「見えるその先」までサポートします。

